-
トップページ
製品情報
μReactorについて
成果事例
導入の流れ
よくある質問
お問い合わせ
-----------
戻る
長畑律子先生

ポリマー合成の研究を行っている長畑先生にマイクロ波がもたらすメリットをお聞きしていると女性研究員ならではの仕事観へとお話が広がりました。

先生は学生時代からずっと、つくば市でお過ごしのようですね。まずは、現在の職場である産業技術総合研究所に入所し、ポリマー関連の研究を始めるまでのことを聞かせて下さい。


~研究所の閉鎖が転機に~

大学では有機合成の研究室でした。それで、有機化学を続けたくて化学企業に入ったと言いたいところですが、実は、住んでいたアパートを引っ越したくなかったので、つくば市に研究所がある会社に就職しました。(引っ越したくなかった理由は、当時、野良猫たちの面倒を見ていたから。どうやら初めから仕事優先の人生ではなかったようです。)

会社では、材料科学室という支援部門に配属されました。研究所内の困り事が集まってくる部署です。材料開発や顧客対応で問題が起きると、我々が分析評価や調査、時には合成の支援などをします。社内の全ての事業に関わることができ、幅広く勉強できる部署でした。特にポリエステル、ポリウレタン、アクリルなどの樹脂事業には関わりが深く、ポリマー研究との出会いは会社時代です。

7年間勤めた会社が研究所を閉鎖するという予想しなかった事態になったのをきっかけに、物質工学工業技術研究所(現(国研)産業技術総合研究所)の重点研究支援協力員制度に応募し採用されました。このとき配属されたのが高分子合成研究室(竹内和彦室長)です。

高分子合成に関する研究を行っている部署で、会社時代から馴染みのあったポリカーボネート(PC)やポリエステル樹脂の環境調和型製造法の開発を行いました。

長畑律子先生

研究ツールにマイクロ波を利用したきっかけを聞かせて下さい。


~思いつきからの始まり~

当時高分子合成研究室では、縮合高分子の合成に取り組んでいましたが、私は、中でもPCとポリエステルの合成を行いました。縮合高分子は、その名の通り縮合反応により合成します。これは平衡反応(生成物が原料に戻る反応が同時に起こる反応)ですから、分子量を高めて強い材料にするのが難しいという課題があります。また、高温で長時間の反応が必要で、原料の石油だけでなく、製造エネルギーにも多量の石油を使用することになります。しかし、これらの樹脂は企業が製造するようになって既に60年以上経っており、その間にも「乾いた雑巾を絞る」ような努力がなされてきています。これ以上の高効率化はほとんど難しいというのが現実でした。そこで思いついたのがマイクロ波加熱でした。有機合成では研究例が増えてきていたマイクロ波化学ですが、15年ほど前に我々が始めたときには、まだ高分子合成ではほとんど使われていませんでした。まずは電子レンジで実験してみよう、ということになりました。今から思えばひどいもので、電子レンジの天板に無理矢理穴を開けてガラス器具を通していたり(本当はマイクロ波の漏洩を起こさないようにちゃんと設計しなければならない)、原料をシャーレに入れてターンテーブルに乗せて「チン」したり。温度の計測・制御もできず、臭いですし、焦げてしまったり・・・問題山積でした。ただ、その中にあれ?と思う良い結果が含まれていました。

きっかけとなったポリマー合成ですが、マイクロ波を使うことでどのような効果が期待できますか?


~企業の底力アップと足場固めに~

高速・省エネは今さら言うまでもないでしょう。我々がこれまでに作った装置では、実機で70%省エネを実現できたというデータもあります。しかし、私たちがこれまで化学反応にマイクロ波を使ってきて、一番先に思いつくメリットは「簡単・便利」かもしれません。電子レンジが家になかったころ、冷めたご飯は蒸し器や鍋で温めていました。まず蒸し器の水が温まって蒸気が上がるのに時間がかかります。それからご飯の入った器が温まって、温かいご飯をいただくまでにかなりの時間がかかります。下手をすると真ん中までちゃんと温まっていなかったり。しかも後には使った蒸し器や鍋の洗い物が出ます。化学の加熱を考えた場合も全く同じです。旧来の加熱方法は時間がかかる上に熱媒・溶媒(鍋の水に相当)が必要、反応が終わったらそれらの処理(溶媒の廃棄や熱媒に使用したオイルの掃除など)が待っています。

マイクロ波重縮合

マイクロ波重縮合

ご家庭で、みなさんが電子レンジをお使いになるのはなぜでしょう。理由は「簡単・便利」だから。今さら電子レンジのない世界に戻れますか?実際には便利だけじゃなく、本当に省エネになっているのですけどね。ご飯(4人分)の温めでは、従来の調理法では光熱費11円76銭(12分間)、電子レンジでは2円00銭(4分間)という調査結果もあります((社)日本電気工業会)。「簡単・便利」というメリットは、言い換えれば高効率化ということになりますが、省エネのように原油換算でこれだけというような数字で表すのが難しい部分ではあります。工場などの加熱をマイクロ波に更新すると、ミスの削減や安全・衛生面の確保、オンデマンド生産化による顧客の満足度アップ、省スペース化などが図れるはずです。リスク管理が重要視される時代ですし、企業の底力アップと足場固めにマイクロ波加熱の導入を是非進めてほしいと思います。

忘れてはいけない重要なメリットは、「品質のアップ」です。特に、加熱時間が短く済むことと均一に加熱できることが、副生物(不純物)生成の削減に繋がります。我々が取り組んできたポリマー合成やその他の化学合成では、着色と不純物の少ない高品質品が得られています。

企業との繋がりを大事にされている印象が強いですが、長畑先生がマイクロ波の研究を進めるために心がけている事とは?


~一緒に汗をかく~

自分たちのかかわった材料がこんな製品になります、などと聞くとモチベーションが上がります。これまでずっと「製品化」を目標にして取り組んできました。産総研のような公的な機関では、開発した技術や材料を自身で実施(製品化して販売)することはありません。

30年後に使われる技術の開発を行うのであれば産総研だけで進める方法もありますが、もっと近い将来に市場に出る製品をターゲットにする場合は、初めから企業さんと連携し、産総研が持つ力を産業競争力に活かしたいと考えています。

そんなコンセプトで研究を進める際、材料メーカーさんと私たちだけではプラントを作るのは困難です。装置メーカーさんの協力なしにはうまくいきません。四国計測工業さんには、共同研究の初期の段階から協力をお願いし、課題(反応)ごとに異なる装置を作っていただいています。装置設計のためには、各者が一緒になって、現場で何度も実験を繰り返して試行錯誤します。苦労が多いながら「ものづくりをする」実感が得られる楽しい過程なんです。

ところで、こちらの研究室は女性の研究員さんが多いのですが、何か理由が有るのですか?


~マイクロ波は女性の味方!?~

確かに、女性研究員の比率は、以前から全国平均以上だと思います。

もともとつくば市には優秀な技術系の女性がたくさん住んでいるという特殊事情もあると思いますが、各地の大学(海外も含め)からもこれまでに何人も女性を受け入れて来ましたから、女性が応募したくなるオーラを発していたんでしょう。竹内さんの明るく優しい人柄による影響が大きいと思います。

不思議なことに、過去・現在のメンバーは、女性の方が多趣味です。

長畑律子先生と高分子合成研究室の仲間

仕事もして、家事もして、趣味や遊びも楽しむ。決して仕事の優先順位が第1ではないのですが、仕事も手を抜かず短時間に集中してこなしてくれるすごい人材が集まっています。実は私の生活スタイルもその通りですので、一緒に働いてくれる女性たちも働きやすいのではないでしょうか。マイクロ波を使った実験は短時間で終わらせることができます。仕事も遊びも充実させ、人生楽しもうという私たちにはピッタリですね。もちろん家庭での料理にも電子レンジはフル活用ですよ!

女性での観点、身近なものとして感じてもらう観点などから、今後どのようにマイクロ波の研究を進めていきますか?


~女性研究者に必要なものは・・・?~

女性ならでは観点から、「女は度胸」です。研究はチビチビやらない方がいいと思っています。(すみません、「女性ならでは」のコメントじゃないですね。)

マイクロ波をより身近なものとして感じてもらえるように「我が社でも是非マイクロ波を取り入れてみよう」と思っていただけるためには、とにかく実例を示していくことだと思います。残念ながら今までは、企業様との契約などもあり、あまり装置の絵なども公開できませんでした。これからはもっとPRしていけるようがんばります。

私たちはポリマー合成の専門と思われているかもしれませんが、実は既にそれ以外の様々な分野に取り組んでいます。私も含め構成メンバーのバックグランドは様々、企業にいた経験のある人も多いので、抵抗なくいろいろなことに挑戦します。食品、医薬品、電子材料、太陽電池、等々。今後もなるべく「来る者拒まず」の姿勢であらゆる可能性に取り組んでいきたいです。

高分子合成研究室

長畑 律子 (ながはた りつこ)
産業技術総合研究所 化学プロセス研究部門
 1989年筑波大学自然学類 卒業
 1989年~1996年アイ・シー・アイ・ジャパン(株)
 1996年 ~ 現在国立研究開発法人産業技術総合研究所
 2000年博士(工学)の学位授与(山形大学)
https://unit.aist.go.jp/cpt/index.html (化学プロセス研究部門HP)
主な研究テーマ ・高分子化学
・マイクロ波化学
・質量分析学
主な著書 ・バイオプラスチックの高機能化・再資源化技術,第3編第10章「マイクロ波による
   バイオプラスチックの迅速製造法開発」,[㈱エヌ・ティー・エス、2008.04]
・マイクロ波化学プロセス技術Ⅱ,第1編 第4章 実用化への道, [㈱シーエムシー
   出版、2013.01]
・最新 マイクロ波エネルギーと応用技術,マイクロ波化学,[㈱産業技術サービス
   センター、2014.11]
サブメニュー

四国計測工業株式会社
〒764-8502 香川県仲多度郡多度津町南鴨200-1 TEL:0877-33-2221 FAX:0877-33-2210
プライバシーポリシー
サイトマップ
Copyright © 2015 Shikoku Instrumentation CO.,LTD. / Kagawa,Japan.